Monday, November 24, 2025

スノーボード技術を力学から再設計する

マテリアルと知識の進化によってどのように発展してきたか?それを踏まえてどの方向に進化するのかを考え、どんな問題を解いていけばよいのかを示す。

まずはどの程度進歩の余地があるかを考えてみる。
スキー競技が始まった時代 猪谷親子は内足加重でスキーをしていたのだが、外足加重が正しいと判断してそれで差をつけて勝った。今じゃあスノーボーダーでもスキーを渡されたら一番最初に外足加重を練習するぐらい当たり前のことだけれども、当時のトップ選手がこれだったのである。50年かかったらこれぐらい進歩するのは当たり前なのだから、これからも進歩の余地は大きいと希望を持つべき。

一方なかなか進歩しない部分もある。最初期のスキー映画の雪面状況の判断と重心操作の巧みさは現代のトップスキーヤーと変わらない
https://youtu.be/-6oBWHssGPA?si=tMDYUAWDVBLD_pzf

これについては、詰将棋の体系化のようにパターン認識を分類して覚える実効性のある仕組みが必要である。観望天気やゴルフの地形の読み方と同じである。この点についてはけん玉学習ソフトと間違い探しを混ぜたようなソフトで雪面の硬さなどを映像から予測していく訓練で向上可能である。

道具の進歩については板のねじれが少なくなり、振動しなくなり、フレックス方向には柔らかくなった。これによって雪面へのグリップ力が圧倒的に高くなってより板をロールさせてもエッジが抜けなくなった。2000年から2020年を比較してもレースでのロール角度は10度以上深くなっている。

この道具の進歩の余地はどの程度あるのであろうか?
振動吸収についてはある波長を打ち消そうとすると他の波長に共振しやすくなる。その一方、起きる振動のパターンについては1000fpsのカメラが滑走時に担いで滑れるレベルにまで小型化しつつあるのでもっと詳細に取得できるようになってきたし、AIバブルが一度弾けてGPUが安くなればかなり粒度が細かい雪とスキーのシュミレーションが1ターンだけでも可能になってくれるであろう。それによってターン前半のロール角度が浅い段階から板に圧力をかけてもずれなくなるはず。そのズレない板を利用するためには、ブーツの前方向の反発だけではなく、後ろ方向や横方向の反発も最大限に利用した滑走が求められるであろう。もちろん板の反発力も現在よりももっと利用していくことが求められる。
この点については、ブーツの後ろの反発力を使い切っている選手はあまりいないのでかなり大きな改善する余地があると考える。しかし、ここに最初からアプローチするのは怪我のリスクの問題から良くないと判断する。ブーツの膝を入れる方向の反発力さえも使い切っていないのでそれを利用することから着手するべき。
ブーツが反発する特性については、かなり行き当たりばったりで作っていると推測している。
人間にはそもそも パワー優位と速度優位の2つの傾向が存在して、弾性係数が局所的に高いブーツはパワー優位に、弾性係数が低いけど大きな範囲である程度反発するブーツは速度優位な人間に適している。これらの使い分けがなされていないし、公開もされていないので、どのような方向にトレーニングしたらよいかもわからない。道具の設計上の理想的なターンを公開してそれに向かってトレーニングすることでより高いパフォーマンスを発揮できるだろう。

板の挙動の把握について
RTK UWBなど短波測位がより一般化することで ずれの程度をVRや音の高さでスキーヤーに10hz程度で伝えることは可能である。板の平行度を10hzで伝達されながら滑走してみた結果、それは役に立つことがわかったのでこれはかなり期待できる。

板の理想的な挙動について
これは厳密解は求められないのだが、どれだけ板を起こしてもずれないかを10hz程度で解析することは可能になりそうだ。
厳密解を求めようとするときに使うのは、まずはずれない板と任意に移動可能な重心。これだと現実的な解が出てこないので重心の移動を2000w/hぐらいに制限しておいて、移動可能範囲にも制限をかけてモンテカルロ法のような典型的な自動運転の機械学習のようにランダムにいろいろ試してみる方法で現在の認識とは違うよりタイムの良い走行が確認できた場合に、それを現実でやってみることになる。
 これについてはかなりの現実に近づけるための制限が必要なのだが、スキーゲームで行われているぐらいの雑なシュミレーションでは全く役に立たないだろう。問題の設定をとても粘性が高く、それが変化する流体として雪を捉えなければならないだろうからそこを突破できる数学的な進歩が必要だろう。ナビエ・ストークス方程式の解がより計算量が少なく得られたとかそういうニュースがたまにあるので、今の調子で積み重ねていけばこの方向の発展も有り得そうである。

現実的にここ5年ぐらいでできること

板のトップをモーグルに突き刺したときにどれぐらいの反発があるのかを学習する余地がある。これはモーグルで堀島行真とその他でコブの中の滑走技術が大幅に違うし、本人も流れを止めないで動かせるのは僕だけと言っているのでそうなんだろう。引退したモーグル選手でできるのはブラッサールや原大虎、韓国の選手でも一人だけできる人がいます。スキースノーボード技術選手権でもそこまでできる人は居ないのでおそらくこの技術を学習する技術の発達がかなり重要だと思う。
スノーボードではこれができるひとは未だにいないのでこの点でかなり進歩ができる。
ソフトウェア支援で工夫できるのは、フットベットの加重中心が真ん中からどれだけ動いたかを音階で10hzで100ms遅延で通知して、コブに板が当たってから最大のフレックス方向に曲げられるまでの足の進展と膝の入れ方を加重中心基準で学習させる方法である。
モーグルは最も安価に厳しい条件の制限滑降が実施できるので、加重タイミングの標準化実験をするのにとても良い環境である。この環境を基準として加重タイミングとその方向を野球のピッチングでフォースプレートを用いて分析しているのと同じように、前と後ろのベクトルでターン中に表示して分析するのはお金さえあればどうにかなりそうである。
今想定している結論は800Nで0.2秒程度のつま先側への出力。かかと側は0.3秒以上継続するもう少し少ない入力が理想であるとの結論だ。

レースカービングについては、スキーのタイトなラインでの処理についてはかなり改善の余地があると思う。成功率がトップ選手でもまだまだ低くて、急斜面から緩斜面に入る手前の大きな振り幅のセットでの成功ターンっていうのは30%程度しかないと思う。パラー発揮でも巧緻性でもまだまだ改善の余地がある。

スノーボードのGSでもスキーのGSでもものすごい会心のターンは1シーズンでも1ターンぐらいではない?スキーではFilip Zubčićというパワー系のブーツをめちゃくちゃ曲げる人がものすごいターンでトップのodermat の最高のターンを更に超えてくるようなターンをたまーにする時がある。あれぐらいパワーを掛けてタイミングが合う状態を毎回続けられる選手が出てくる可能性がある。

このモーグルも含めたすべてのターンで最高のターンを出せるのがヒルシャーである。スノーボードは競技人口が少ないのとロシアが戦争で出てこれないので最高のオールラウンダーは不在である。今の最高のオールラウンダーを超える人が10人ぐらいになるのがここ5年で成し遂げられる妥当な進歩であるように思います。

科学的分析ではフォースプレートを滑走で使って力の発揮の標準化をして、今のピッチングよりもう少し進んだ状態まで進むのがここ5年の目標としてちょうどよいと思う。

なお、野球と比べてスノースポーツは層がかなり薄いのと、一般的に国内のトップだと認識されている北見工業大学の鈴木教授の研究の方向性がかなり僕が上記で述べた全体的な見通しとは離れているので主流な研究からは進展は望めないと考えている。








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